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下部組織からの提言・報告書

化学物質の個人ばく露測定のガイドライン

平成27年1月
日本産業衛生学会 産業衛生技術部会
個人ばく露測定に関する委員会

【はじめに】

 本文書「化学物質の個人ばく露測定のガイドライン(産業衛生技術部会)」(以下、「本ガイド」)は、日本産業衛生学会産業衛生技術部会の「個人ばく露測定に関する委員会」が、個人ばく露測定を行なう際の手引きとして作成したもので、同委員会の活動結果をまとめた報告書に相当する。

 ここ数年、リスクアセスメントの推進の動きに合わせて個人ばく露測定の重要性が増している。また、行政においても個人ばく露測定(個人サンプラーを用いた測定)の導入検討のための準備が進められつつあり、そう遠くない将来に個人ばく露測定が正式に法制度の中に取り込まれる可能性がある。このような動きを踏まえて、日本産業衛生学会産業衛生技術部会では「個人ばく露に関する委員会(以下、委員会)」を2012年11月に臨時の委員会として立ち上げた。

 委員会の目的は、産業衛生技術部会が個人ばく露測定に関する「実用上のガイドライン」を作成し、日本産業衛生学会会員と社会に対して提案し推奨することであった。ここで「標準法」、「基本手順」などでなく「実用上」の「ガイドライン」という緩い言い方をすることには意味がある。個人ばく露測定については、海外では複数の主要な方法が提案され、その内容が必ずしも手順の細部まで規定し切れていないケースが多々あるように、その技術的内容は比較的複雑で、ばく露測定時の様々な局面に応じて多くの選択肢や判断要素がある。従って、本ガイドの内容を過度に固定化したり「教科書」のように扱うことなく、あくまで基本的な考え方を参照するための「ガイドライン」とし、これをもとに現実の状況に応じて合理的に判断してリスクアセスメント・マネジメントを進めて頂きたいと考えている。合わせて、本ガイドは理論を整理したものではなく、作業現場で役立つ実践的な内容を目指した点も強調したい。

 委員会が取扱った個人ばく露測定の対象範囲は、全ての化学物質と全ての作業場とした。また法制度上の規定や方法は議論の対象としていない。従って、本ガイドの内容は、既存の特定の法令を遵守したり、その代替法とするためのものではなく、全ての化学物質に関する一般的なリスクアセスメント・マネジメントの一手段として使うことを念頭に置いたものである。

 委員会では、リスクに基づく合理的・科学的な管理を基本とすること、実用性を適切に考慮し実践的で実行可能な提案を行うこと、個人ばく露測定に関する内外の既存の方法、情報を広く視野に入れることを議論の進め方の方針とした。また、個人ばく露測定の方法の詳細を必要以上に規定し過ぎず、測定を行う者の判断・裁量の余地を適切に残すことを適宜考慮した。個人ばく露測定ではそもそも多くの選択肢や判断要素があり得ることとともに、その実施者に判断・裁量の自由度を与えることで、短期的には訓練や熟練を強いる結果になり得るものの、中長期的には技術的な蓄積や専門性の強化につながることが想定される。また、事業主にとっては、良質な測定実施者を確保して育成し、その者を通して作業場のリスクを合理的、自主的、主体的に管理することがインセンティブとなる。従って、判断・裁量を活用した合理的な個人ばく露測定の進め方は、結果として我が国の労働衛生管理全体の向上に大きく貢献しうると考えたものである。

 委員会では2012年11月から2014年2月まで10回にわたる会議を開催するとともに、電子メール等を通じて特に個別の論点に関する詳細な議論も行った。

 本ガイドでは、その本文に個人ばく露測定を進めるにあたっての基本的な方法や考え方を述べた。また、理解を促進するための技術的解説や参考情報、実例、統計的な根拠等は31項目の「補足資料」として後半に別途まとめた。

 本ガイドが個人ばく露測定の普及、ひいては国内の労働衛生管理の一層の向上のために少しでも役立てれば幸甚である。本ガイドをお読みいただく皆様には、趣旨、内容を是非ご理解いただくとともに、積極的に活用していただくようお願いしたい。

 最後に、委員会に任意で参加いただき貴重な助言を頂いた麻布大学名誉教授、中明賢二先生と、十文字学園女子大学教授、田中茂先生にお礼を申し上げます。

    平成27年1月
           日本産業衛生学会 産業衛生技術部会
           個人ばく露測定に関する委員会
            委員長   橋本晴男
            東燃ゼネラル石油株式会社
            産業衛生部長

[注意]
旧ウェブサイトにて下記URLにて公開していたものです。
http://joh.sanei.or.jp/pdf/J57/J57_2_09.pdf

添付ファイル

化学物質の個人ばく露測定のガイドライン(産業衛生技術部会)pdf:2.3 MB 平成27年1月 日本産業衛生学会 産業衛生技術部会 個人ばく露測定に関する委員会

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