MENU CLOSE

声明・見解・報告

外部専門機関導入法制度への産業医部会意見(要約)を追加しました

外部専門機関導入法制度への産業医部会意見(要約)(pdf)

 

産業医有資格者、メンタルヘルスに知見を有する医師等で構成された外部専門機関を、

一定の要件の下に登録機関として、嘱託産業医と同様の役割を担うことができる

とした「建議」に基づく法(または省令等)改定の中止を求める、産業医部会の見解表明

2011年9月15日  日本産業衛生学会 産業医部会幹事会

 

【要約】

(1)産業医の意見を反映しない産業医制度変更は極めて遺憾である

「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」を名目とした産業医制度の大きな変更が、高い専門性を有する産業医の意見をほとんど反映させずに進められていることは、極めて遺憾である。

(2)産業医制度の基本政策のあまりに安易な変更は看過できない。

外部専門機関構想は、“現場の混乱が危惧される”ため、“その影響等を見極めた上で慎重に判断すべき”と記載された検討会報告書からわずか1カ月後の建議において推奨されており、真剣に見極めて議論されたとは到底思えない。

(3) 産業医業務を外部専門機関が請け負う構造上の問題点

①費用の安さのみが外部専門機関を選別する要因になる危険性

②外部専門機関が契約を維持しようとして発注者の意思に沿った判断を行う危険性

③個々の事例について熟慮するよりも契約料金と時間の範囲で形式的に対処する危険性

④産業医契約を安価にして収益性の高い健康診断契約等の付帯事項に形骸化する危険性

⑤業務分担により事業場や作業を十分に観察しないまま医師が不適切な判断を行う危険性

(4) 「比較的小規模の事業場における産業医選任率の低迷」への対応について

産業医選任率のみならず衛生管理者選任率や衛生委員会開催率が低迷しているのは事業者側の法順守意識が大きく影響しており、産業医制度の変更だけでは、何ら改善に結びつかない。

(5) 「産業医の活動時間や頻度が十分でない事業場の存在」の指摘について

産業医への客観的な原因調査が行われることなく、産業医活動の不十分な原因が産業医側のみにあるという強引な仮定の上に「外部専門機関構想」を打ち出しても、適切な解決にならない。

(6) 現在選任されている産業医と協働しない「外部専門機関」は無意味

外部専門機関に契約を丸ごと変更するよりも、「現在選任されている産業医と協働しながらメンタルヘルス実践分野で産業医を支援する仕組み」のほうが産業保健の拡充になり必要性が高い。

(7) 従業員50人未満の事業場に対してこそ外部専門機関の活用を

現時点で産業医選任義務がない従業員50人未満の小規模事業場においてこそ「外部専門機関構想」を活用して産業保健活動の恩恵を得られるよう、制度目的を明示すべきである。

(8) 「新たな枠組み」のストレス調査が雇用差別や誤解に繋がる危険性

 産業医等による事前教育や調査目的と限界の説明および衛生委員会での承認などの基盤がないままに、法で全国一律に実施を強いることは差別に繋がる危険が伴い、効果も不透明である。

 

以上より、「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」という名目で導入が検討されている「外部専門機関構想」および「新たな枠組み」について、建議以前に議論を戻し、産業医部会等の現場で働く関係者の意見を取り入れて、再検討して頂くことを切に希望するものである。

以上

一覧に戻る